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俺より体は大きいが、細く見えるし大丈夫かと思っていたが、予想以上にガッシリと強い力で受け止められて、そのままぎゅっと抱きしめられてしまった。
「びっくりした。こんな可愛いお耳を揺らして、学が走ってくるから」
「亜蘭、ごめんっ、これはその……」
亜蘭はなぜか俺を放さずに抱きしめたまま、俺の耳をサラリと指で撫でた。
「ひっんんっ」
体がゾクゾクして、思わず変な声が出てしまい、どうしたのかと焦って口を手で覆った。
「学、だめだよ。お耳を他人に見せるなんて……悪い子だな」
「んっ、あぁっ、それは……訳があっ……」
フゥーっと耳に息を吹きかけられたら、背中まで痺れてしまった。
こんな感覚は知らない。
「おいっ! 逃がさないぞ! そこのお前! 大人しくこっち渡せ!」
俺を追いかけて来た大神の怒鳴り声が聞こえた。
占い通りに胸に飛び込んでみたが、さすがに大神達相手に亜蘭一人では立ち向かえない。
逃げようと言おうとしたら、悲鳴のような声を上げたのは、先ほどまで偉そうに吠えていた大神だった。
「おっ……おまっ、白馬!! なんで……」
「ずいぶんと大人数で騒いでいると思ったら……また、縄張り争いですか? 学内では禁止されているの、ご存知ですよね?」
「ひっっ、そっ、これはその……遊んでいただけ、というか……」
あまりの慌てっぷりが不思議に思えて、亜蘭の腕の中から顔を動かして、大神を見てみた。
確かにこの大学の経営が白馬グループであることは、周知の事実なので、一族の人間である亜蘭に知られたら困るというのは理解できた。
それにしてもな慌てっぷりだ。
大神は滝のような汗を流して真っ青になっていた。
まるで、恐怖を感じて怯えているような……
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