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「遊び? それにしては、あそこにいる兵藤くんは、怪我をしているみたいですけど。……それに先輩、さっきの逃がさないぞ、と、こっちに渡せって、誰のことですか?」
「それは………」
「まさか、ここにいる、学のことじゃ……ないですよね?」
大神はついに膝から崩れ落ちて床に手をついた。
一体どうしたのかと思ったら、奥にいる大神の仲間達もそうだし、兵藤まで首元を手で押さえて苦しんでいるように見えた。
「どうか……たすけ……命だけ……は……」
大神は息ができなくて、必死に声を絞り出しているように見えた。
俺は全く何ともないのに、どうしたのかと亜蘭を見たら、亜蘭の顔から表情が消えて、いつもの青い目が、燃えるように赤くなってギラギラと光っていた。
自分が苦しめられているわけではないが、このままではいけないと気がついた俺は亜蘭の腕を掴んだ。
亜蘭がまるで別人のように見えて、少しだけ怖くなったが、とにかく止めないといけないと体が動いた。
「亜蘭! どうしたの? 亜蘭……大丈夫?」
亜蘭の頬に触れて、懇願するように撫でたら、火の海から一転して、亜蘭の瞳はいつもの青い海の色に戻った。
前を見据えていた目が、ゆっくりと動いて俺に向けられた。
「学? 泣きそうな顔をしてどうしたの?」
「だって、亜蘭が………」
「ごめんね、怖がらせちゃったね。学のこといじめていたみたいだから、ちょっと怒っちゃった」
亜蘭はいつもの微笑を浮かべて、お返しみたいに俺の頬を撫でてきた。
ちょっと怒ったのレベルではなさそうだ。
これが神獣の力なのか、大神達も兵藤もゲホゲホとむせながらみんな床に伸びていた。
「さて、後片付けを呼ぶとして、学のコレ、いつしまうのかな?」
「わっ」
亜蘭にまた耳をツンツンされてしまった。
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