⑧とっくん◯

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⑧とっくん◯

 肉食系獣人達の学内での縄張り争いは、今に始まったことではないが、どうやら今回はやりすぎてしまったらしい。  大神が兵藤をタイマン勝負に誘ったのが始まりで、生意気な兵藤を黙らせるために大勢でボコボコにするつもりだったようだ。  これから協議されるが、大神とその仲間、喧嘩を買った兵藤も一定期間、出席停止の処分になるだろうと聞いた。  兵藤の怪我は、本人が言っていた通り、その場に駆けつけた彼の専属医によって、すぐに手当されて動けるようになっていた。  ただ、あんなに大騒ぎしていたのに、誰もが放心状態で大人しく連れて行かれたので、教員達も不思議がっていた。 「それで? 何があったのか教えてくれるかな」  場所を大学内のカフェに移して、向かい合った亜蘭が一口コーヒーを飲んでから、俺に問いかけてきた。  喧嘩について色々と事情を聞かれて疲れていたので、俺もコーヒーを飲んでほっと一息ついたところだった。  ピンチから助けてもらい、その後も亜蘭が間に入って説明してくれた。  ここまで世話になって、嘘をついてごまかすことはできなかった。  ようやく耳をしまうことができたので、俺はフードを外して元に戻った頭を亜蘭に見せた。 「その……さっきは、兵藤くんの争いに巻き込まれて、どうしようかと悩んでいたら……つい」 「つい?」 「あ、あのっ、分かっているよ。完全でなくとも部分的な獣化は、せせ性的な誘惑を意味するんだろ? それは、知っているけど、俺の場合、自分じゃコントロールできなくて、でっ、出ちゃうんだ」  キョトン、という言葉が似合う顔で、亜蘭は大きく目を開けて俺のことを見てきた。  その澄んだ目に、俺のアホみたいな顔が映っていた。 「コントロールが……できないの?」
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