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なんとか重い足を引きずって、リビングまで行くと、父親と母親が朝食をとっていた。
「おはよう学。あら、アナタ……また出てるわよ。いい加減、ちゃんと隠せるようにしなさい」
「そうだぞ。子供ならまだしも、大学生にもなって、恥ずかしい」
食卓につく暇もなく、挨拶と共にいきなり母親の小言が飛んできて、父親にまで怒られた。
「恥ずかしいって言われたって……そんなの知らないし」
「まぁ、反抗期ね。とっくに終わったと思ったのに。私達はヒト型が基本だけど、それぞれどうぶつさん獣人なのよ。気を抜くと耳が出るなんて、それは未熟な証で、恥ずかしいことなのよ」
母親が味噌汁を入れてくれたが、おたまを振り回して力説してくるので、汁が飛んできて熱かった。
「みんなだいたい高校生くらいで完全体になるから、意思でコントロールできるんだ。だから日常生活で変化することはほとんどない。みんなが動物の本能で動いていたら社会が成り立たないだろう」
ほらと言って、父親の頭には長い耳が出現した。
フサフサの白い毛がついた可愛らしいウサギの耳だ。
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