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どう見ても中年のメガネ親父には、全然似合わなくて、俺はうっと言いながら後ろに引いた。
「やだぁお父さんったら、いつ見ても可愛い耳ね。こんなところで出すなんて……」
「お前の方が可愛いじゃないか」
母親の方はサルの耳になっていて、ヒィと声を上げそうになった。
二人で朝から耳を触り合って、イチャイチャしているので、俺は飲んでいた味噌汁を噴き出した。
息子の前だったことに今さら気がついたらしく、慌ててどうぶつの耳をしまった両親は、ゴホンと咳払いをして静かに食事を再開した。
俺はまだ受け入れられない現実に押されるように、手を上げて自分の頭を触った。
そこにはフサフサの丸い耳が出ていて、悲しくて泣きそうになった。
「気をつけなさいよ。どうぶつさん属性の中には、肉食系の本能が強く残っている種族もいるから、アナタのその弱々しい耳を見られたら、襲われて最悪の場合食べられて……」
「あーーーーー! もう分かった、分かったから!」
それ以上聞きたくなくて、俺は意識を頭に集中させて何とか耳を戻すことに成功した。
味噌汁を飲み干して、ガッと椅子を引いて立ち上がった。
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