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②しらない世界◯
俺の名前は落合学。
都内の大学に通うごく普通の、……普通よりは地味寄りな、何をしても平均で目立たないタイプの学生だ。
幼稚園から今までずっと、目立たない、存在が薄い、この領域から出たことはない。
キラキラ輝く連中が羨ましいとは思うけど、目立つほど揉め事に巻き込まれるので、何も起こらない安全圏での暮らしにそれなりに満足していた。
容姿は母親に似ていると言われるが、特にこれといった特徴のない地味な黒髪に、焦茶の瞳だ。
目も鼻も口も小さいが、その上背も小さいので、目立つところは何もない。
人混みを歩いていると、一緒に歩いている友人も見失うことがあるらしく、薄くて印象に残らないなとよく言われてきた。
一言で言えば、空気みたいな存在だと自分でも思ってきた。
そんな俺に起こったありえない事態。
始まりは大学のクラスで流行り出した、どうぶつさん占いだ。
どこの誰が考えたのか知らないが、SNSで芸能人がやり出して、一気に一般人にも広がった。
占いなんて信じない俺は、ひたすら心の中でそれを信じるヤツも、ただ楽しんでいるヤツもバカにしていた。
そんな時、友人に見せられた俺のどうぶつさんを見て、俺はセンスねーなとこれまた素直な意見を言った。
ただそれだけ。
その日家に帰って普通に寝て朝になり、鏡を見て自分の頭に謎の耳が生えていることに気がついて絶叫した。
驚いて部屋に飛び込んできた両親は、俺の頭を見て、全く動じることなく平然としていた。
そして朝から何バカなことをやってるの、早くしまいなさいと言ったのだ。
そこから状況を理解するまで、しばらく時間が必要だった。
だって何もかもおかしい世界に意識が飛ばされて、そこから戻ることができないなんて、とうてい受け入れられるはずがなかった。
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