②しらない世界◯

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 いつもと同じ朝、いつもと同じ道。  だけど全てが恐ろしく思えて、俺はいつも以上に背を丸くしながら道の端を歩いていた。  朝の通勤通学時間だ。  行き交う人は皆忙しそうに足を早めている。  ごく普通の光景。  元の世界に戻ったのではないか。  そう錯覚するほどに平和な朝だった。  前方に信号を待ちをしている女性の背中が見えた。  その女性の前にはベビーカーがあって、俺が近づくと中が見えてしまった。  ベビーカーの中には、可愛らしい赤ちゃんが寝ていたが、その頭にはくるんと丸まった小さなツノと耳が生えていた。  ギョッとしてつい見てしまったが、そこに近所のおばあちゃんらしき女性が近づいて声をかけてきた。 「あらまぁ、ヒツジさんの子かい。おツノが可愛らしいねぇ」 「ありがとうございます。最近やっとツノが生えてきたんです」 「赤ちゃんらしくて可愛いねぇ」  朝の和やかな会話のようにも見えるが、明らかに俺には理解できない話をしている。  一日の始まりから現実を突きつけられたようでガックリと項垂れた。  この世界に純粋な人間、というものは存在しない。  全ての人間がヒト型と呼ばれる種族である。  かつては様々な動物であったが、社会を築くのに適している人間の姿になれるよう進化して、獣人と呼ばれるようになった。  もうこの時点で訳がわからないが、なぜかその動物属性の方はどうぶつさんと呼ばれていて、俺の元の世界にあった、どうぶつさん占いに出てくる十二の動物で構成されている。  というか、名前からして絶対あの変な占いと繋がりがあるとしか思えない。  俺があの占いをバカにしたから、もしも◯◯の世界に入ったら、みたいなパラレルワールドに入ってしまったというのが、今のところ俺が何とか考えられるアホな答えだ。
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