本気になる程、別れたくなる

今度の相手役

「えっ？映画の仕事、決まったんですか？」

それは、秋のはじめの事だった。

「不倫物。しかも、相手役がいい。」

マネージャーは、台本を渡しながらニコニコしている。

「木下流。今人気絶頂の若て俳優。」

「ええ……」

その名前なら、聞いた事がある。

TVやCMに引っ張りだこ。

映画や舞台に出れば、劇場を満席にする程の実力を持っていた。

そんな人が、今度の相手役？

「もちろん、受けるよね。三上。」

「はい。精一杯やらして頂きます。」

私は台本を数ページ捲った。

すると、”ベッドシーン”という文字が目に飛び込んで来た。

「えっ？ベッドシーン、あるんですか？」

「ああ、少しね。」

マネージャーは、それがどうしたの？という雰囲気。

ベッドシーンは、いくつかやった事があるけれど、どれも若い時だ。