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そう言って、スタジオを出た時だった。
誰かとぶつかった。
「痛てぇ。」
「ごめんなさい。」
目が合ったのは、あの木下流だった。
「あの、大丈夫でした?」
私はぶつかった手を見た。
ちょっと赤くなっている。
「ごめんなさい。赤くなっている。」
「ああ、このくらい大丈夫です。気にしないでください。」
木下君は、無表情でそう言った。
「木下!そろそろ、次の仕事行かないと。」
「待って下さい!」
木下君はそう叫ぶと、私の方を振り向いた。
「三上詩奈さんですよね。」
「あ、そうです。ご存じでしたか。」
まさか売れない女優を知っているとは、思わなかった。
「俺、密かにあなたのファンなんです。」
「えっ!」
まさか木下君が、私のファン?
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