ありきたりのドラゴンファンタジーと一味違う本のご紹介

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ありきたりのドラゴンファンタジーと一味違う本のご紹介

本を選ぶ時に、表紙か裏にある著者の紹介と簡単な本の内容紹介を読みます。 しかしこの本には、著者の紹介しかない。 中をパラパラすると、漢字がいっぱいで堅そう。 最初はどんなジャンルのお話か、判断がつきませんでした。 ちなみにリアルドラゴンはでてきません。 漢字が多いし、疲れている時は読むのがつらいかも・・と、思ったのですが、読み始めると、中身はとんでもなく濃い、福袋のような作品でした。 「ドラゴンズ・タン」竜舌 宇佐美まこと著 新潮社 2000円 構成は 1章「流砂の王国」 2章「機関木人」からくりにんぎょう 3章「紫禁城の雷獣」 4章「泥の河に沈む」 5章「そして龍はよみがえる」 章ごとに独立したお話で、4章まではバッドエンド、主人公は死んでいきます。 でも、主人公たちは次の時代に転生され、因縁を紡いでいくのです。 起承転結でいくと 1章が起で物語・因縁のはじまり 2章・3章が承で、4章が転、5章がすべての伏線が回収され結末を迎える。 時代は 1章が古代中国 2章が遣唐使の時代 3章が明朝 4章が戦前・日本が満州国設立を画策していた時代(近現代中国・日本史) 5章が現在の日本 すごいのは、作者の知識の半端なさ。ものすごい知識量、資料の読み込みです。最後に参考文献が載っていましたが、実際はもっとあるのでしょう。 歴史・時代ものって、やはりこうでなくてはいけないと思いました。 浅薄な知識で書くと、物語が薄っぺらい、ふわふわして説得力がないのがよくわかります。 自分が中華ファンタジーを書いていて、よくわかります。 このお話は、舞台背景、歴史背景がおせちの重箱のように中身がしっかりつまっているので、臨場感が満載です。 真実は細部に宿る・・って感じで、物語に重厚なリアル感を読者に持たせるのです。 それぞれの章には、キーワードが必ず出てきます・ #翠の雫型の耳飾り(1個それぞれが、別々に運命の人が持つ) #転生・男性(必ず肩からけさがけに傷あとがあり、生まれる) #転生・女性(あやかしを見る・または危機を感じる能力を持つ) #馬・汗血馬 #永遠の命を持つ刺客(転生した耳飾りを持つ主人公を、殺そうとする赤髪の男) #勝邪の剣(他の武器では倒せない相手を殺すことができる) #竜舌(すべてを破壊する強い願望・熱意を持つ忌まわしき何か) 4章までは、主人公たちが死んでしまうので、お話としてはバッドエンドですが、5章では、耳飾りが二つ揃い、剣で刺客を打ち負かす大円団の作りになっています。また、現代のコロナウィルス問題を彷彿とさせる作りになっており、作者の緻密な構成力に圧倒されます。 この5章の構成が、緞帳のように重厚で格調高く、読む人を一気に読ませるのですね。 私の中華ファンタジーなんか、ペラペラで、どこかの砂漠に吹き飛んでしまいました。 ああ・・圧倒されて、もう書く気がおきない・・です。
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