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一度忘れたこと思い出すときに、僕は布団の上に一人でいて、秋の肌寒い朝を半袖で毛布にくるまり、ボーッと脳の覚醒するタイミングを見計らい、何も起きない午前中に堕落していく身体を溶かし、あの子は今もどこかでなんて考えて、暗くなりそうな心を無理やり日向の方へ引っ張り、その張力の糸が切れたとき、僕は空中へ分解して弾け飛んでいき、いよいよ、いよいよだななんて勝手に暗くなっている。
僕は忘れていたことを思い出した。そのとき目の前にそれを思い出す要因になった人がいた。そういう人はきっと僕をどこまでも連れて行ってくれるだろうと思って、しばらくついていった、そしたらその先に不運の連続があって、道はちぎれて、電車は止まった。僕は最初思ってた明るい気持ちを忘れて、暗い夜道に心を溶かしていた。
自動販売機の明かりがトンネルへと下っていく坂道の途中で、ぼんやりと灯りを灯す。灯すときに僕が横を通り過ぎるときに、メタリックレッド色のオニヤンマが、暗い空に向けて自販の上から飛びだった。あの時は夏だった。そんなことをベッドの上で思い出す時、ピンポンの音がなって、外では君がケーキを持って待っていた。
まっていた!時空が歪んでその上で立てなくなっても、それでもそこで待っていた!なっていた、音が遠くの方に、近くのものを遠ざけていく、そんなデタラメな記憶を捨てて、新しいこれからの楽しみに身を置いた、華奢な君が待っていた!
愉快な小学生たちが、生活の授業で花に水やりをする、その水のしたたる、愉快な音を、僕は学校のフェンス越しに確かめて、遠くには老夫婦が散歩をしていて、その先の坂を手をつないで登ろうとしていた。
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