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「そういえばさ、那月ちゃん返事してなくない?」
波瑠が茶化すように言った後、交互に俺と那月を見た。
「本当だ」と、綿谷もつぶやく。
那月と目が合った。
少し照れくさかったが、俺なりに微笑み返したつもり。ぎこちなかったかもしれないが。
いや、まてよ。ここで微笑むのは、少し気持ち悪いような気がしてきた。
そんなこんなをぐるぐる頭の中で考えていると。
「私も、孝則が大好き」
前方から、俺の好きな声が聞こえた。
うっすら涙を浮かべたキラキラの瞳で、そんな可愛いことを言うものだから、今すぐに抱きしめてキスしたくなった。
一度那月の髪の毛に触れようとしてしまった自分の手を、慌てて背中に回しねじれそうなくらいぎゅっと組む。なぜなら、視線を感じて隣を見ると、波瑠と綿谷が怖い顔で笑っていたからだ。
スキンシップは、二人きりになった時までちゃんと我慢しなければなと思った。
「気持ちが通じ合ってイチャイチャしたい気持ちはあるだろうけど、俺らいるし我慢してねーっ!しかもこれからちょー忙しいからねぇ〜!」
「……。わかってるよ!」
「ほら、何してる!練習だ!練習!」
「おい……。誰の真似だそれ」
「真似とかじゃないよ?ね?那月ちゃん」
波瑠がとぼけた顔をしながら、また那月の肩を組む。
さっきも思ってたんだが、コイツ、那月のこと触りすぎじゃね?
「波瑠、おまえ向こう行け!」
「はい?」
「おまえ!さっきから……その。くっつきすぎなんだよ」
ごにょごにょ言い終えた後顔を上げると、ムカつくほどニヤリ口の波瑠の顔が目に飛び込んできた。
「あ!ごめんごめーん」
わざと大袈裟に驚いて、那月から離れる波瑠。楽しんでやがる。絶対ごめんって思っていないだろ!何気なく横を向いた瞬間、綿谷まで波瑠と同じような顔をして俺を見ているのに気付いた時、俺は恥ずかしくて机にガンガンと額をぶつけたくなった。
「孝則君照れてるー!かわいー!」
「うっせー!」
「孝則君」
「え?」
半笑いの綿谷に名前を呼ばれたその時、何か重大なことを忘れているような気がして俺は首を傾ける。
「幸せな所悪いんだけど、俺の分のラーメン、一ヶ月奢りよろしく」
俺はライブの時、聞き取れなかった綿谷の所望についてじっくり思い出していた。
「!あー。ライブの時のあれ。そんな内容だったのか。い、一か月!!?……分ね。りょ、了解」
「大丈夫?孝則君?」
「……はい、大丈夫です!」
「あと、俺、美琴に告る時、夜景が綺麗な場所で告った」
「綿谷。やっぱ、おまえ、かっこいいな」
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