なにもかも、ぜんぶお前のせいだ。

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「もうだいぶ成長、してるだろ」  対してハルも、動物の求愛行動のように額を嬉しそうに擦りつけてくる。  だからすぐにはハルの変化に気がつけなかったのだ。 「どこがだよ」  視線につられ、なんとなくハルの下腹へ目をやったら、たしかにそこは言葉通りだった。 「ほら」 「ほら、って……」  言い淀む綾都に、ハルは含みのある熱視線を向けてくる。  綾都の沈黙を都合よく解釈したのだろう。  ご機嫌で成長アピールをしてきた。  今すぐ飛びつきたくなるほど嬉しいし、同時に今日もほっと安堵する。  まだ、綾都のこと──好きでいてくれるんだって。  ハルを愛した年月分だけ、あざとさの仮面をかぶってきた甲斐があるのだと。  けれど、余熱だけでまだぐつぐつと煮立つ不気味な鍋の音が、綾都の不安を煽ってくる。  たちまち年々増強していくハルへの様々な疑心暗鬼が、綾都の足元からぐつぐつと這いあがってくるようだった。  「素直さ」という武器を持ち合わせていない綾都は、時にこうして自身で勝手に創り上げた虚像に押しつぶされそうになる。  好きを持続させるのは難しい。  そのために、あざとい仮面をかぶり続けてきたのに……。  いつの間にか床へ視線がずれていた綾都の眉間には、真ん中にきつく皺が寄っていた。  途端、ハルのバリトンが甘く耳元で囁いてくる。 「ねえ、キス……していい?」  これもいつものパターンだ。  だというのに、不安に陥った綾都には咄嗟になにも返すことができなかった。  つくろわなきゃと思っているのに、言葉がでない。 「こういうの、嫌いじゃないでしょ?」  追い打ちをかけるように、ハルがハチミツのようにどろり甘くたたみかけてきた。  
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