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「やっと見つけました。こんなとこにいたのですね」  姉の護衛騎士は私にそう告げた。  まったく、良く見つけたものね。  いくら姿は一緒だといえど、わざわざ見つからないように隣国まで逃げて来たというのに。  見事というか、なんというか。 「よく見つけましたね。えっと……」  名前、なんだったかな。  姉の護衛騎士と言っても、別に私と親しかったわけではない。  むしろ、熱心であればあるほど、その逆とも言える。 「ライザとお呼び下さい、第13皇女さま」 「ライザ卿……。皇女様だなんて。あなたも知ってるでしょう。私はあそこで捨て置かれた存在であり、そんな身分などないことも等しいことを」  皇女などと言われれば聞こえがいいが、私はあの国ではほぼ捨て置かれた存在。  好色な父王が手をつけた侍女に産ませた娘であり、父ですらその存在を忘れていたくらいだ。  身分など、あってないに等しい。  ただそう……。  この赤い髪と、赤い瞳が父王に良く似ていただけという存在。  ずっと忘れられ、後宮の片隅の小屋で暮らしていただけの。  皇女などと呼ばれること自体が、まずおかしいのだ。  ましてや今の私は、あの国も身分も何もかも捨てて逃げた冒険者なのに。 「そうであったとしても、あなたは」 「そーいうの、めんどくさいので、リアと呼んでください」 「ではわたくしのことも卿はおやめください。リア様」 「で、用件はなんなんですか? こんな異国まで私を探しに来たということはよほどの用事なのでしょう」  護衛騎士が(あるじ)から離れてまで私を探していたなんて。  よほどのことがあったか、姉からの命令か。  でもお姉は命令とかするタイプではないのよね。 「……失礼を承知で申し上げます。すぐにわたくしと公国へお戻り願いたい」 「それは姉さまの命令?」 「違います! それは決して違います。これはわたしくしの独断です」  でしょうね。  あそこから私を逃がしたのは、他でもない姉だもの。  あれから数年経って事情が変わったとはいえ、戻れとは言わないと思った。 「で、私にあそこに戻って何をさせたいの? 何があって戻したいの?」 「主であるシーラ様がこの度、敵国であったリドンへ嫁ぐことになったのです」  ああ。随分懐かしい名前ね。  リドン国は、公国と敵対関係にあった国。  しかも先の戦争において、公国が負けた国だ。  表面上の和平を結ぶために、公国はいろんなことをしているとは聞いたけど。  血の気の多い、父王のことだ。きっとそれ以上の思惑があるんだろうなぁ。     「あそこは、元々私が嫁ぐ予定だった国よね」 「そうです。リア様が嫁ぐ予定だったのを、主がお逃がしになったため、話がとん挫していたのです。しかし今回の敗戦のために、話を進めなくてはならなくなり」 「姉さまが選ばれた、と」 「そうです」  敗戦国に嫁ぐなど、それはもう捕虜となんら変わりはない。  姉は私などとは違い、側妃の娘で身分も高く後ろ盾もあるというのに。  その姉を差し出さないといけないほどの、事態ということなのね。 「だから今更、私に戻って姉の代わりをしろというのね」 「王が、もしリア様を見つけることが出来ればそれでもかまわないと。前回の罪は不問にするとおっしゃられて……」 「つまりは、姉さまが私を逃がしたということがバレたということね」  わざわざ姉は私を逃がすために、馬車の事故を偽装してくれたというのに。  それが王にバレていただなんて。 「だから今回、姉さまが選ばれたということなのね。姉さまはなんて?」 「主は絶対にリア様を探すことはないように、と」 「そう……」  
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