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「うわ、いいじゃん」
古い家でも、水周りをリフォームしただけで、随分と雰囲気が変わった。
ダイニングキッチンは、隣の和室とつながって、LDKになっている。
1階には、もうひとつ直人が使う予定の八畳間があり、畳が入れ替えられていた。
「いいでしょう?」
母親は自分がリフォーム工事したかのようにドヤ顔をしている。
「うん、いい!」
トイレや風呂場も見て周り、直人は、すっかりテンションが上がってきた。
「トイレと洗面、2階にも作ったのよ。住人さん達が使えるように」
そう言いながら、ギシギシと階段を上がる母親について直人も階段を上がった。
2階は、住人スペース。
昔ながらの広い八畳間が三部屋とトイレ、洗面。畳は全て入れ替えられている。
あとは納戸があった。
納戸の中もすっかり片付いていて、六畳ほどあり、なんならここでだって暮らせそうだ。
「凄いね、お金かかったんじゃない?」
直人は、もしかして借金があるのかと不安になった。
「大丈夫よ、おじいちゃんの遺産で、全部できたの。あとは住んでくれる人達が決まればこの家も安泰」
母親はニコニコしながら、不動産屋の封筒を取り出す。
「まあ住む人達もほぼ、決まってるしね」
と言いながら、直人に封筒を渡して来た。
「え?そうなの?」
「こないだからずっと募集してたからねえ。年内には、引越して来られると思うわ。みんなそこの芸大の男の子」
この家から徒歩で行ける距離に芸術系の大学がある。
「そうなんだ」
資料を見ると三人の男性の名前と連絡先が書いてあった。
『伊豆佐 史(イズサフミ)20歳 G大学 グラフィック学科』
『笹垣 愉(ササガキサトシ)20歳 G大学 建築学科』
『仲村希央(ナカムラキオ)21歳 G大学 日本画学科』
「ふうん、この3人ね」
「そ、みんな可愛いわよお、こないだ不動産屋さんでチラッとお逢いしてね」
大学生なら直人でも管理できそうだ。
少しホッとしながら、母親と階下に降りた。
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