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翌朝。
10時過ぎにお腹が空いて目が覚めた。
「あー、そっか、ひとりだった」
独り言を言って、なんだか急に実感が湧いてきた。
キッチンでお湯を沸かし、インスタントコーヒーを入れる。
テーブルについて、コーヒーを飲み菓子パンを齧っていると、ピンポン!とインターフォンが鳴った。
「え?もう?」
確かに今日もう1人が来ると聞いていたけれど、午後だと勝手に思い込んでいた。
仕方なく、髪をクシャとわざと乱して玄関に向かう。
まだジャージのままだ。
シャワーにも入りたい。
「はい」
鍵を開けてガラリと引き戸を開けると、体格の良い健康そうな男の子が立っていた。
「おはようございます!」
「あ、お、おはようございます」
圧倒されて少し腰が引けてしまった。
「笹垣愉(サトシ)と言います!」
「あ、はい。海堂直人です」
直人が笹垣を玄関に招き入れると、どデカいスーツケースも一緒に入ってきた。
「俺、荷物これだけなんで!」
「あ、そうなんですか?」
「実家が遠かったんで、ひとり暮らしする部屋を探してたんです!ここを見つけた時、もう絶対ここに住むって決めて」
「そうなんですね、良かったです」
ニコニコと笑いながら、笹垣に言われ、直人も釣られて笑った。
二階の部屋に案内し、荷物を片付ける笹垣を置いて、階下に降りた。
…とりあえずシャワー入ろ…
眠気を覚ましたくて、風呂場に行き、熱いシャワーに入った。
少しずつ目が覚めてくる。
そうだ、ルール決めなくちゃ。
風呂場とかトイレとかの使い方も。
色々考えてシャワーからタオルを巻いて出ると、目の前に笹垣が立っていた。
「うわ」
「あー、すいません!片付け済んじゃって」
「ちょっと待ってて下さい!」
貧弱な身体を見られるのが恥ずかしくて、慌てて自分の部屋に向かった。
部屋着に着替えてから、深呼吸して気持ちを落ち着ける。
ちゃんとしなきゃ。
部屋から出ると笹垣は、リビングのソファに座っていた。
「すいません、お待たせして。コーヒー飲みますか?」
「あ、俺、自分でやります」
笹垣が立ち上がってキッチンのほうに来た。
胸板が厚く肩幅もひろい。
「鍛えてるんですか?」
押し倒されたら、ひとたまりもないなあ、と余計な事を考えてしまう。
「あー、はい。高校時代ラグビーをしてたんで!その延長で鍛えてます!食べる事が大好きなんで、鍛えないと太るんですよー」
「そうなんですね」
相手に壁を作らない笹垣の人柄に直人も少しずつ心が解けてきた。
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