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ひと通り説明をして、世間話をしていると、笹垣のお腹がグゥ―と音を立てた。
「あ、お腹空きましたよね、なんか食べますか?」
直人が言うと「いいんですか?ここ食事は付かないって聞いてますけど」と笹垣は、嬉しそうに聞いてきた。
なんだか可愛らしくて「今日は、特別にいいですよ」と直人は笑う。
初めての、自分だけのキッチンにテンションがあがっているのもあり、直人は張り切ってキッチンに立った。
とりあえず昨日の内に母親が冷蔵庫に入れて置いてくれた具材と、炊飯器に残っていたご飯で炒飯を作ることにした。
「うわー、いい匂いですねー」
笹垣は、嬉しそうにカウンターからフライパンを振る直人を覗き込んでくる。
緊張したが、なんだか楽しくて、毎日でも笹垣にご飯を作ってあげたい気持ちになってきた。
「美味しい分かんないよ?」
直人は照れ隠しに言う。
「絶対美味いですよ!美しそうな匂いしてる!」と笹垣は、楽しそうに食器棚を開け、適当な器を用意してくれた。
「うまっ!美味いですよ!直人さん」
いきなり名前で呼ばれて照れてしまった。
「ありがと、えーと笹垣くん」
「あ、愉(サトシ)でいいですよ!」
笹垣がニコリと笑う。人懐こい笑顔にまた釣られて笑ってしまった。
「じゃあ愉くん。これからよろしくね」
直人が言うと愉は、右手を出して、直人の手を握った。
「こちらこそよろしくです」
直人は、暖かい愉の大きな手に自然と癒されていた。
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