第弐章 護るということ

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「そうだろう、そうだろう。しかし、明日からは師匠と弟子じゃねぇ。同輩だ。よろしく頼むぜ、十蔵」 「はい」  先に立って、屯所へと向かう広い背中に続く。  甲賀様と宗次郎の話はしても、原田様は葵様の名は出されなかった。僕のため、なのだろう。  三月(みつき)前、晴れて祝言を上げ、甲賀様の御新造(ごしんぞう)となられた葵様とも先ほどお(いとま)のご挨拶をしてきた。彰義隊の軍務次第だが、次にいつお会い出来るか、わからない。  戦線が広がっている会津や奥羽へ、急遽、出陣することになるかもしれない。お慕いするお方との別れを済ませてきた僕の気持ちを(おもんぱか)ってくださったから、葵様の話題は避けられたのだろう。  『お庭の立葵、もうすぐ満開になるわ。その頃、また一緒に眺めましょうね?』  けれど、僕は約束してきた。また一緒に、という約束を。
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