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「そうだろう、そうだろう。しかし、明日からは師匠と弟子じゃねぇ。同輩だ。よろしく頼むぜ、十蔵」
「はい」
先に立って、屯所へと向かう広い背中に続く。
甲賀様と宗次郎の話はしても、原田様は葵様の名は出されなかった。僕のため、なのだろう。
三月前、晴れて祝言を上げ、甲賀様の御新造となられた葵様とも先ほどお暇のご挨拶をしてきた。彰義隊の軍務次第だが、次にいつお会い出来るか、わからない。
戦線が広がっている会津や奥羽へ、急遽、出陣することになるかもしれない。お慕いするお方との別れを済ませてきた僕の気持ちを慮ってくださったから、葵様の話題は避けられたのだろう。
『お庭の立葵、もうすぐ満開になるわ。その頃、また一緒に眺めましょうね?』
けれど、僕は約束してきた。また一緒に、という約束を。
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