第弐章 護るということ

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 大切なお方との〝次の約束〟があるから、大丈夫。  空高く、お天道様が眩しい陽射しを降らせる季節。朱夏(しゅか)が終わるまでに、必ず約束を果たそう。  手土産は三笠屋の団子が良いだろうか。みたらし、きな粉、(よもぎ)に磯辺、あんこ乗せ。それぞれ十本ずつ、注文しよう。きっと喜んでいただけるはずだ。  茜色の空に沈みゆく日輪を見上げ、串団子を両手に持って笑う美少女をそこに映す。自然と笑みが零れる。  ——葵様。咲き揃った立葵に囲まれた貴方様は、どれほど美しいことでしょう。再会できるその日を楽しみに、明日から僕は励みます。  いつも通り、心中だけで呼びかけてから、笑みを引っ込めた。  自ら選んだ『明日』に何が待っているのか。確たることはわからないが、ひとつだけ言い切れる。 「原田様っ」  僕にはこのお方がいてくださるから、大丈夫。 「あ? なんだ? 男前になる秘訣でも聞きたいか?」  名を呼んで隣に並んだだけで、楽しい(いら)えが返ってくるお師匠様の手助けが出来る日々は、きっと充実しているに違いない。
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