終章 花のもとにて【一】

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 戦闘が始まってから、どれくらい経ったのだろう。  止まない雨のせいで時刻もわからない。かなり経ったようでもあり、まだ一刻しか経っていない気もする。 「清水門が破られた! 敵が押し寄せてくる前に迎え撃て!」  伝令の声に小隊二個が呼応する。僕らの隊だ。 「遅れるなよ、十蔵」 「はいっ」  乱戦。乱戦。乱戦。敵味方入り乱れての激烈な戦闘が続く。雨と火薬よりも、もっとむっとする臭い、酷い血臭の中で。  進んでは後退し、後退してはまた進む。それを繰り返す僕らの周囲には、吹き飛んだ伽藍と、欠損した遺体が転がっている。  降雨が、血溜まりをさらに拡げていく。  戦場では、こんなに血が流れるのか。僕も、いつまで戦えるだろう。  体力には自信があったはずなのに、腕が、足が……だんだんと、力が入らな……。 「十蔵っ!」  え? 「馬鹿野郎。伏せろって言ったろう。聞こえてなかったのか?」 「……原田、様?」 「どこも撃たれてないか?」 「は、はい。ですが、あの、僕などより、は、はら……原田様のほうがっ」 「あぁ、気にすんな。ちょっとしくじっただけだ」  ちょっと? そんなわけは無い。脇腹から、こんなに血が流れているのに。ふらふらと歩くだけだった僕を庇ったせいだ。  足手まといの僕のせいで!
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