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デビューしてからも
そして、ついに母が私をデビューさせることを決心。
最後の仕上げは成長も止まった16歳。整形手術だった。
私は小さい頃から歌は好きで才能があるとは言われていた。
お赤飯を焚くまではぽってりしていた体型も変わり、完璧なボディも手に入れた。
唯一足りなかったのは美しい顔。
重そうに下がった瞼。団子鼻。分厚い唇。素顔はもう跡形もない。
形の良い耳は首から上のパーツで唯一母が褒めてくれる場所。だって、ここは整形できないから。
鼻筋を嫌味でない程度に通して、小鼻を形良く作る。
顔の輪郭は四角い顎を削って卵型に。
目は目頭を切開して瞼の余分な脂肪を取り、更に二重瞼に。
分厚い唇も形を整えた。
今までのトレーニングや歌のレッスンよりも辛かった。
麻酔が切れると痛みが激しかった。死にたくなるほどだった。
それを乗り越え、やっと包帯が取れたときには自分でも驚くほどの美しい顔立ちの少女が鏡から驚いた顔で覗いていた。
母にそっくりの顔だった。
そう。母も整形美人。なぜ私にこんなにお金をかけられたかと言うと、結構上の地位の政治家の愛人だから。
私が生まれたときに政治家に整形がばれたが、表立って政治家と私が歩くわけでもないので二人の仲は変わらずに続いた。母と政治家が時々会うときも家には絶対に寄らなかった。
デビューは2022全日〇美少女コンテストに決まった。
途中、自分の得意なことで、私はa〇oの『うるせいよ!』を歌った。
完璧なボディと顔でこのインパクトのある曲を歌ったことで審査員の眼をひいた。更に、歌自体もシャウトもガナリの激しさも完ぺきだったので皆を驚かせた。
コンテストは予想通り優勝。すぐにレコーディングも決まった。
そして、彗星のように現れた綺羅星 星羅が出来上がったのだ。
ちなみに星羅は本名である。
母は私が女の子として生まれたときに、この予定を既に立て、これからは星羅が母親の為にお金を稼ぐのだ。
政治家には何人も愛人がいるし、母はもう、おばさんだから。
でも、芸能界にはそんな人たちばかり。みんな努力して、自分を磨いて、周りに気を使って段々とのし上がっていく。整形で芸能関係の話が何も分からない私が生き残れるのかは私にもわからない。必死で演じるだけ。
私はこれからは母の為に綺羅星 星羅を演じて芸能界で10年ほど生きた後、劇的に引退する予定だ。
その後は母が愛人をしていた政治家の息子の医者の愛人になることが決まっている。
その医者は今回私の整形をした医者である。私のボディが気にいったそうだ。顔はいろいろな整形をしているので今美人ならば気にしないと言っていた。
もしも、子供が生まれて女の子だったら私は私と同じように育てるのだろう。
もう、どの自分が本当の自分なのかはわからない。
女とはこうしてずっと何かを演じて生きているのかもしれない。
【了】
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