紅の指輪の少女

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 「えっ?!……何?!」  彩名は思わず香織に問いかけたが、彩名に笑みを浮かべながらステージの方を見ろと何も言わず首を振るだけだった。瑠璃も同様だった。  彩名は仕方なくステージの方に向いた。目線の先にあったのは、ステージ下で音楽に合わせて一糸乱れぬダンスを見せる観客達の真ん中で、周りと一緒になって一糸乱れぬダンスをしながら時折彩名を見つめる拓海の姿があった。  ――どういう事……まさか、フラッシュモブ?!…………私に?!……――  普通にカラオケ大会を楽しんでいた観客達がいきなり音楽に合わせて素人とは思えぬ一糸乱れるダンスを見せ、その中心で周りと同じように完ぺきな踊りを見せる拓海の姿という光景を目の当たりにし、彩名は状況を完全に理解出来る状態にはなれなかった。  そんな時だった。司会者の声がスピーカーから響いた。  「おっ!! 審査委員長の岩田さんがステージの中央にっ!!……マイクを取りました!!」  周りの歓声が大きくなる中、その司会者の声が耳に入った彩名は、ステージ上を見た。  純彦の名を騙る男性が、ステージの中央に立ちマイクを手にしている姿だった。そして、マイクを口に近づけた。  「……それではここからは、宮沢拓海君の一世一代の大イベントの為に私が歌わせていただきます!! それではお聴きください『紅の指輪の少女』です!!」  「はあぁぁぁぁぁっ??!!!!!」  抑えきれずに完全に漏れた彩名の心の声は、最高潮に達した観客達の歓声と拍手にかき消された。
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