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その事件の終わりは、あまりにも早く訪れた。
彩名が放った予想外の言葉によって会場が静かにざわつく中、観客達の中にいた数人の若者の集まりが彩名の言葉の真意を理解した。その集まりの中でスマホを操作していたひとりの男子中学生が、スマホの画面を見て驚きと困惑の表情を浮かべたのがきっかけだった。
そのスマホの画面に映っていたのは、ネット掲示板だった。とある低俗雑誌の企画でパパラッチが撮影した現在の純彦の写真とその記事が何らかの理由で流出して無断転載され、その掲示板を含めた幾つかのウェブページや画像検索結果の表にあったのだ。困惑の表情が拭えない男子中学生の周りにいた人々は、その写真を見て同様に困惑の表情を浮かべ、クラスターの如く周辺の観客達に驚きと困惑の波紋が広がっていった。
そんな会場中の空気の変化を察したのか、ステージ上にいた純彦の名を騙る男性は、いつの間にか姿を消していた。だが、正体がバレた事でもう逃げ切れないと察していたのか、純彦の名を騙る男性はすぐに見つかった。お祭り会場のそばにある居酒屋でひとりビールを飲みながらうなだれていた所を駆けつけた警察官とお祭りの運営スタッフに発見され、自らが偽者である事を自供し逮捕されたのだった。
お祭りの企画運営に携わる地元商工会の職員が、お祭り開催前の春の終わり頃に町内にあるカラオケ居酒屋で出会った純彦の名を騙る男性を本物だと信じ切ってしまった事が、今回の事件の全ての発端だった。メインイベントのカラオケ大会は純彦の名を騙る男性の完全プロデュースで進められ、拓海の彩名へのプロポーズ作戦として実行されたフラッシュモブも、拓海のその願いを叶えようと動いた親しい親戚がお祭りの運営スタッフであった為、純彦の名を騙る男性の協力によって実行出来たのだった。
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