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しかし、今回の一件で彩名と拓海の間に何とも言えない微妙な空気が流れるような関係となり、些細な話すらもしなくなってしまった。それどころか、自らは被害者側とはいえ純彦の名を騙る男性の詐欺行為に加担してしまった事への後ろめたさから、元々地元にある大学を志望していた拓海だったが、あの一件の後に関西地方の大学に志望変更してしまったのだ。とにかく地元から離れたい、その思いがそうさせてしまったのだった。
しかしながら、純彦の名を騙る男性によって拓海への恋を台無しにされてしまった彩名だが、あの時の告発に対する後悔は全く無かった。あのまま拓海のプロポーズを受け入れれば、後で全てが明らかになった後で自分や拓海や友達だけでなく純彦も傷つくからだった。
とにかく、彩名の告発によって純彦の名誉は守られたのは確かであった。
そして、今回の一件は純彦自身にもある変化をもたらしていた。彩名がそれに気づくきっかけは、彩名のスマホに届いた純彦からのショートメッセージだった。
「あの頃と決別して第2の人生を送っていたつもりだが、今回の事件で岩田純彦は世界でたった一人しかいない事に気づいたよ。そらうみ祭りに迷惑をかけたバッタもんの代わりに来年そこで歌いたいのだが、どうしたら良い?」
END
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