紅の指輪の少女

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 くれな~いの~指~輪を~き~み~にあ~げ~る~……  年に1度の夏に行われるそらうみ祭りのメイン会場である猪原湖畔公園のスピーカーから流れてきた音楽は、今年の春に配信されたチョコレートのCMソングだった。タイトルは『紅の指輪の少女』で、去年の春にデビューした男性アイドルグループ〈イースト・アンド・ウエスト〉が歌う4枚目のシングルであるが、それはCMの為に書き下したオリジナルソングではなく、かつて1960年代後半に一世風靡して伝説となったグループサウンズバンド〈ザ・オッカナビーズ〉が作った同タイトルのレコード曲をカバーしたものである。  ――凄いなあ……『紅の指輪の少女』――近くの道路沿いにある露店で買った鯛焼きを食べながら公園の入り口付近で会場内を眺める岩田彩名は、賑わう会場内をその曲がさりげなく包み込んでいる状況に感心していた。何故なら、当時10代後半で甘いマスクと高身長が映えるすらっとしたスタイル、そして透き通った歌声で多くの女性達を魅了した〈ザ・オッカナビーズ〉のボーカルの岩田純彦が、彩名の祖父だからである。
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