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「……彩名? 彩名!!」
香織の問いかけに、彩名は再び我に返った。すぐ香織の顔を見た。
「えっ!?」
「どうしたの? 何度もボーッとしちゃって」
心の中は、ステージ上の純彦の名を騙る男性に対する怒りで一杯だったが、このカラオケ大会を楽しむ人々の雰囲気に圧倒されたせいか、彩名はステージ上にいる純彦が偽者である事を言う勇気が湧かなかった。
「……なんか今日暑いね。大丈夫だけどさ……」
と、その場凌ぎで言うのが精一杯だった。
「ほら見て早く!!」
「彩名ちゃんと見て!! 始まるよ!!」
香織と瑠璃の急かす言葉に押され、彩名はステージ上を見た。
その直後、彩名は度肝を抜かれた。ステージ上の純彦が偽者である事を忘れる程だった。
「こんばんは、宮沢拓海です!! お聴きください〈イースト・アンド・ウエスト〉の『紅の指輪の少女』!!」
その瞬間、観客達は歓声を上げ、スピーカーからイントロが流れ始めると歓声は更に大きくなっていった。
が、彩名は開いた口が塞がらず、ステージ上の拓海をじっと見つめる事しか出来なかった。
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