今ここに生きる奇跡

「わしの嫁はお前のようなばあさんじゃない。もっと若くてかわいい」
　自身も年齢を重ね年老いたことに気づくこともなく、祖母の手を振り払った。
　今のことはわからなくなっても、若かりし日々のことは鮮明に思い出せるらしい。

　心を過去に飛ばし、私のことは娘である母とでも思っていたのかもしれない。
　今まで聞けなかった祖父の体験談を最後に少し聞くことができた。

　私がその話を聞いた時には、現実に祖父が戦争を経験してから半世紀以上の月日が流れていた。
　認知症になってからの話でもあるので、もしかしたら祖父の中で改変されてしまっていることや、聞いた私の記憶違いもあるかもしれない。