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祖父の思いついた方法は、前線に送り込まれないようにする方法だ。
受験を前にしていた祖父には夢があったらしいが、その夢をあきらめ歯科医になる道を選んだ。
医者になれば人を殺さなくてすむが、前線に赴かなければならない可能性がある。
だが歯科医ならば後方支援ですむと祖父は考えたわけだ。
のちに主人の祖母からその夫である祖父が、同じような考えで自動車の修理工場を始めた話を聞いた。
軍の車の修理をしていれば戦地に行かなくてすむという算段だ。
赤紙が届いてしまえば行かぬとは言えぬこの時代に、何とか自らや家族を守るために頭を働かせた人が他にも多くいたに違いない。
それは夢を捨てなければ手に入らなかったものかもしれないが、その彼らの決断のおかげで私たちは今生きられているのかもしれない。
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