21人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
軍医は階級も高く、食料も手に入りやすくて家族も助かったと祖父は言っていた。
卵ももらえるんだという言葉に、今は簡単に手に入る卵でさえも、手に入れることが難しかったのだと改めて気づかされた。
結果として祖父にとっての戦争は他の多くの戦地に赴いた人と比べれば、苦しみの少ないものだったかもしれない。
だが、祖父の思惑通りに行くほど甘いものでもなかった。
戦争が激しくなるにつれて死者もケガ人も増えていき、医者は足りなくなっていった。
祖父は歯科医ではなく軍医の助手として前線に身を置くことを余儀なくされた。
銃弾の飛び交う中、昨日まで話していた人が次々と命を落としていったという。
武器をもって命を奪う事が無かったのは確かだが、治療中に命を落とす人も多く、歯科医としての知識しかない自分でなければ助かった命もあったのではと思うと、今でも苦しくなると話していた。
最初のコメントを投稿しよう!