今ここに生きる奇跡

7/10

21人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
 祖父がいない間、祖母たちも何度も危険な目に合ったらしい。  隣の家のお風呂に焼夷弾が落ちたらしいが、ためた水で爆発を免れたらしい。  焼夷弾は攻撃目標を焼き払うためにガソリンなど燃焼力の強い物質を詰め込んだものだったと聞く。  そう簡単に消えるとも思えないのだが、祖母はよくこの話をしていた。  おそらくお風呂の水で消えたのではなく、もともと不発弾だったのだろうと私は考えている。  その日、周りの多くの家は焼け落ち、祖母はたくさんの友を失ったらしい。  その後も祖母が住む一角だけが戦火を免れ、今も戦前のままの姿を残している。  新しい家が立ち並ぶ中で、そこだけが異質で古き時代の懐かしい空気が流れている。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加