今ここに生きる奇跡

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 また別の日にも祖母が訪ねる予定だったところに爆弾が落とされたらしい。  一緒に暮らしていた祖父の妹が体調を崩し、巻き込まれずにすんだ祖母は、無事祖父との再会を果たした。  だが、ともに行くはずだった友は予定を変えることなく亡くなったと、祖母は悲しそうに話していた。  そのどちらかで祖母が亡くなっていたとしたら、母が生まれることもなく私もこの世にいなかったことになる。  戦争で失われた命は、その時代に生きた人だけではなく、未来に生まれたはずの人も含まれるのだと感じた。  率先して戦争を仕掛けるようなものは、自らの手を汚さないし、ボタン一つで多くの命を奪う事ができる武器では、人の命を奪う恐怖さえ感じにくいのかもしれない。  そういった立場になったときには、どうか想像力を働かせて、今一度その戦争で失われるものについて考えてほしいと思う。  失われる命が自らや家族であったと置き換えて考えることで、少しでも戦争の抑止力になればと思わずにはいられない。
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