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祖父が戦中に使っていた軍服などはもう残っていないのだと思っていたが、全て柱の中や床下に埋めてしまったらしい。
90を過ぎた祖母がいつかこの世を去る日が来れば、祖父母の古びた家も更地に戻ることになるかもしれない。
その時が来たとしても、私はそれらを掘り起こしたりはしないつもりだ。
祖父の意思に従い、悲しい思い出の詰まったそれらの品は、静かに眠らせておくべきだと思っている。
ここまでが母方の祖父母に聞いた戦中の話だが、父側の祖父母はどうだったのだろうか?
残念ながら何も聞けないまま二人ともこの世を去っていて、父からの伝聞で聞いた話が一つあるだけだ。
父は兄ひとり姉ふたりの四人兄弟だが、すぐ上の姉に会ったことはないそうだ。
彼女は戦中の食糧不足で、生まれてわずか数日で名前がつくこともなく、亡くなってしまったらしい。
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