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優待券を受け取った後悔をしながら、あっという間に昼休みになっていた。
「ノート真っ白じゃん……」
私は机の上に広がっていたノートを見て驚いた。
午前中の授業が頭に入らず、自分でびっくりするほど文字が書かれていない。
家で復習をしたいため、後でよよこに見せてもらおうと考えていた時だった。
「灯子、弟君が呼んでるよ」
「えっ?」
みんちゃんに声をかけられ、私は彼女が指を指す方向に目を向ける。
教室の入口の所に光がこちらをに手を振っていたのだ。
用件は、きっと漆原さんのことだろう。
私は大きなため息をし、友人二人に一言掛けると教室を抜け出す。
廊下に出ると、光がそわそわしながら私を待っていた。
「何?昼休みぐらいアンタの顔見たくないんだけど」
「おい、弟に対してそれはねえだろ!」
「代わりに接点を作ってあげようとしてる姉に対して、その発言もないのでは?」
「うっ……」
言い返せないと気づいた光は、悔しそうに口を噤む。
「それで、ここに来たのは漆原さんのこと?」
「おっ、理解が早いな!さすが灯子!」
「早く用件を言って」
私は光を軽く睨みつけながら用件を話すように促した。
「実はさ、さっき友達から漆原さんの有力情報をもらったんだ」
「有力情報?」
怪訝そうに光に聞き返すと、彼は首を縦に振る。
「灯子、漆原さんが放課後誰とも話さずにすぐ教室を出ていくところを見たことはあるか?」
「あ~。そういえばあまり意識したことはないけど、大体皆が出ていく頃にはいないかも」
私は昨日と一昨日のことを思い出す。
確かに、教室を出るのが早い方である私より前に彼女の姿を確認した記憶はなかった。
「みたいだな。俺の友達も漆原さんに声を掛けようと放課後まで待ったんだけど、見当たらないことがほとんどだったらしい」
「漆原さんは演劇部に入ってるんでしょ?きっと早く部活に行ったんじゃないの?」
「俺も最初はそう思ったよ。けど、違ったんだ。実際、演劇部に行く前にあるところに入っていったという目撃情報があったんだよ」
「あるところって?」
「家庭科室」
「かて……?」
家庭科室という言葉に、私は目を丸くする。
「何で漆原さんが家庭科室に?」
「さあ。詳しいことは分からないけど、これはいいチャンスだと思わないか?」
「うわっ、嫌な予感」
「そんなこと言わず聞いてくれ。作戦は……」
光は構わず私に耳打ちし、自身が考えた作戦を告げる。
彼の作戦に、私は顔を青ざめさせたのだった。
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