演じてみなきゃ分からない

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※※※ 「やっぱりそうだよね!?そうだと思った!!」 放課後の誰もいない家庭科室。 私は光の格好に着替え、家庭科室の端の方でパイプ椅子に座りながら天井に叫んでいた。 光と似た髪色の短髪のかつらに彼から借りた茶色のブレザーの制服、身長を誤魔化せるように10㎝底が厚いシークレットブーツを身に纏っている。 何故、私が家庭科室で光の格好をしているのか。 これは、昼休みに光が考えた作戦「家庭科室で偶然出会った作戦」の最中なのだ。 光の作戦はこのようになる。 放課後、教室を出て家庭科室に向かう漆原さんより早く先回りし家庭科室に入る。 そして光の格好に着替えた私が待ち伏せし、偶然を装い話す機会を得るという流れだ。 なんて無茶な作戦なのだろう。 お陰で私は、ホームルームが終わるまで腹痛と偽りこっそり荷物を持って隣の空き教室で待機していたのだ。 因みに光は今日はバイトがあり、作戦だけ私に丸投げして自分は優雅に帰っていった。 本当に漆原さんを振り向かせる気はあるのだろうか。 腹立たしさを感じながら、私は彼女が車で待ち続けた。 「それにしても遅いな~。もう来てもいい時間なのにまだ来ない」 時計を見ると、針は15時15分を示している。 ホームルームが終わったのは15時。 漆原さんの歩く速さだと、既に鉢合わせしていてもおかしくない時間だ。 ここに来る途中で先生から誰かに呼び止められたのだろうか。 「まさか、今日だけここに来ないで演劇部に向かっちゃったんじゃ……」 考えたくもないが、その可能性も有り得た。 彼女の気分が変わって家庭科室に行かず、そのまま部活に行ってもおかしくない。 「仕方ない。明日また仕切り直すか」 私は諦めて家庭科室を出ることにした。 別に急ぎではないため、今日にこだわらなくても良いはずだ。 帰ったら光に来なかったと伝えれば問題はないだろう。 そう思いながら家庭科室のドアを開けた時だった。 「すみません、通してください……!」 聞き覚えのある凛とした声が不意に耳に入ってくる。 まさかと思い、私はすぐに家庭科室のドアを開き廊下に顔を出した。 そこには、スポーツ刈りの先輩らしき男子高生と行く手を阻まれて困っている漆原さんの姿があったのだ。
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