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「ん? 何だ? いったい何を言って……そうだ!」
すかさず相棒を握りしめた。
「こいつに翻訳してもらえば話が、って、あっ! しまった!」
狼狽えるあまり、相棒を手から滑り落としてしまった。相棒は転がっていき、大男の足元で止まった。
「すみせん、それ、返して頂いても……」
俺は青ざめながら及び腰で手を伸ばす。あと一歩というところで、一回りも大きな手が相棒を鷲掴みにした。
「そんな! ウソだ!」
悲鳴を上げる俺に、大男は何やら訳の分からないことをまくし立てている。
まずい。先住民の怒りを買ってしまった。
早く逃げなくては!
俺は回れ右をすると、脱兎のごとく駆け出した。
「ヤバい、捕まったら殺される!」
後ろから迫る声に追いつかれないよう、ただ全力で走り続ける。
「許せ相棒、こうするしか方法がなかったんだ」
お前の犠牲は決して無駄にはしない。
強い想いが天に通じたのか、涙でボヤける視界の端に、赤く輝く希望を捉えた。
「あれはもしや……!」
美しく咲き誇る花、薔薇だった。
「やった! とうとう見つけたぞ!」
俺は換気の雄叫びを上げながら、薔薇がひしめき合う真っ赤な世界へと飛び込んだ。
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