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8月1日
退部届を持って、最後の練習に向かう。
「あ、あの、すみません、これ、拾ってて、
でも、怖くて渡せなくて・・・。」
オドオドした声に振り向くと、
同じ中学から同じ高校に来た同級生が、
3日前に落としたシューズを持っていた。
「え、どうして、私のだって分かったんですか?」
「僕は、あなたの・・・なんていうか、・・・
平たくいえば・・・、ストーカーをしていまして・・・」
「え、は?ストーカー・・・?」
「僕、あなたのバレー、好きです。
だから、その、や、やめないで・・・。」
「そう言われてもなぁ・・・」
私が煮え切らない返事をすると、彼は突然饒舌になった。
「どうしてですか!
僕があなたを見続けるためにこの高校に来たように、
あなたはバレーをするためにこの高校に来たんでしょう!?
県下一の強豪校の、この高校に!!
あなたはバレーをやめちゃダメだ!!!」
バレーを辞めるのはやめた。
単純すぎるなぁとは思うけど、
私を止めたのは、私のストーカーの言葉だった。
私が彼にお礼を言うと、
彼はハッとしたように、
「こんな最低な僕なんかのために、
君の澄んだ声で礼を言わないでください…」
と言って逃げ去った。
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