俺と運命の小説

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 図書館に着き、中へ入る。外とは違い、涼しくて快適。  「俺は探してる本見つけてくるから、奨吾も適当に本でも見てて」  兄はそう言って、俺の元を離れる。綺麗に並べられた沢山の本の中を、俺はゆっくりと歩く。どこを見ても本ばかりで目が疲れる。  何も考えずに歩いていると、俺はいつの間にか、小説が並べられている場所にいた。難しそうな作品からライトノベルとも呼ばれる作品まで、ずらりと並んでいる。  (小説か…別に読みたいものもないな)  そう思っていた時、薄汚れた一冊の小説が目についた。誰にも目につけられていないような雰囲気がする小説。でも、なぜか…俺は目を惹かれる。  作品名は『壊れたガラスの靴』。作者の名前は聞いたこともない。  俺は小説を取り出し、軽く埃を払う。近くの空いていた席に座り、兄が来るまで読み始めた。小説には、小学生では読めない漢字も出てくる。でも、勉強していたおかげで俺は読むことができた。この時、初めて…というには大げさかもしれないけど…勉強していて良かったと思えた。  読み進めていくうちに、段々と小説の中へ引き込まれる。周りの音も聞こえなくなるほど、集中してしまう。  こんな感覚になるのは生まれて初めてだった。
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