俺と運命の小説

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 毎日、楽しくもない勉強に時間を費やす。それは半ば…いや完全に強制的なもの。  俺には三歳上の兄がいる。兄はいつだって楽しそうに勉強をしていた。父親のようになるんだと、目を輝かせて。勉強の苦手な俺に対して、兄はいつも成績が良くて両親から褒められていた。そんな兄が物凄く羨ましくて…。  小学生の時から勉強ばかりで、毎日がつまらない。両親から兄と比べられることもあって、余計に勉強嫌いが進んでいく。そんな俺に、兄だけは優しく接してくれる。  「兄ちゃん、俺さ。勉強嫌いだよ」  兄は俺の頭を撫でて微笑む。  「そうだよな。嫌いなことするのはしんどいよな」  優しい声が胸に染みて、自然と涙が零れ落ちる。  「兄ちゃんと違って、勉強できないし…。父さんと母さんも、俺にがっかりしてるよ」  「そんなことないよ」  弱音ばかりの俺に、兄はずっと寄り添ってくれる。  「そうだな…、奨吾は何が好きなんだ?」  「俺の好きなもの…?」  兄は俺から目線を外し、前を向く。そして、目を輝かせながら話し始めた。  「兄ちゃんはな、勉強することが好きなんだ。だから、頑張れる。沢山、勉強して知らなかったことを知って、自分の世界が広がっていくのが楽しいんだ」  俺には勉強が好きだなんて、理解ができないけど…。  兄は俺と違う。はっきり好きだと言えて、目を『宝石』のように輝かせることができるものがあるんだと、そう思った…。  話している兄の姿すらも眩しく見えた…。
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