俺と運命の小説

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 その日から、兄を追いかけるように…勉強を必死に頑張った。もしかしたら、自分も勉強が好きになるかもしれないと…期待を込めて。でも、やっぱり楽しくない。つまらない。俺は開いていく兄との差に恐怖すら覚えるようになった。  「頑張らないと…頑張らないと。兄ちゃんみたいになれない」  ボソボソと呟きながら、机に向かう。家でも、学校でも、ひたすらに勉強していた。  そして、いつの間にか…友達もいなくなっていた。誰も俺と遊んでくれない。孤独だけが俺の隣で笑っていた。  小学六年生の夏休み中のこと。  暗い表情ばかりをするようになった俺に、兄が声をかけてくれる。  「なぁ、これから図書館に行くんだけど…お前も奨吾も行くか?」  俺は横に首を振る。一分一秒でも手を止めてしまったら、全て意味がなくなると不安に駆られていた。  「…じゃあ、図書館に行ったら、その帰りにアイスでも買おう!」  俺はまだ首を横に振る。  「アイスじゃなくてもいい、好きなお菓子を買ってあげるよ」  俺は変わらず首を横に振る。  すると、兄はしびれを切らして、俺の腕を掴んだ。  「長い時間、勉強すればいいってもんじゃないぞ。たまには…いや、こまめな休憩が大事なんだ」  俺は抵抗せず、兄に引っ張られて家の外に出た。じりじりと熱気を放つコンクリートの上を、汗をかきながら兄と歩く。兄は何も言わず、俺に歩幅を合わせて隣を歩いてくれた。
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