01.getting mixed up in.

3/19
53人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ
こんなに近くに他人を感じたことが殆どない私の心臓は爆発するんじゃないかと思うほど鳴り響いて、顔が熱くなる。 今の自分の置かれた状況も相まって少しパニックになりそうになった。 「ごめんね。 とりあえず先生に診てもらって、たぶん警察の人も一緒に来るから。」 「・・・はあ、」 申し訳なさそうに眉を下げた彼に、曖昧な反応しか返すことができなくて私のほうが申し訳なく思った。  傍の丸椅子に座りだした彼は何かを知っているのだろうか、そう首を傾げていればドアが開き、部屋の中に白衣の男性、看護師、スーツ姿の叔父さんと女の人がぞろぞろと入ってきて思考が遮られてしまった。 私の手術を担当した医者からは、傷は大きく見えるものの運よく内臓が傷つくことはなく、経過が順調であれば早めに退院することができる、ということだった。しかし、しばらくは傷口が痛むことだろうから無理はしないようにと説明されてただただ頷くしかできなかった。 そして警察の人からは、その時の状況を教えてほしいということだったけれど、その前に私は今日が何日でその事件の日からどれくらいたったのかを確認してから、曖昧な自分の記憶を頭を捻って辿った。 丸椅子に座っていた彼が当時の状況を詳しく教えてくれて、それを踏まえたうえでベッドの上で腕を組み、当時の状況を思い出していった。 -+----------+- あの日は丁度、内山先生の定期健診でカウンセリングも受けて薬を受け取り、後は帰宅するだけだった。 『早く帰ってゆっくりしよう。』 そう思ってショルダーバッグを持ち直して歩道を歩き、横断歩道の信号が青になるのを立ち止まってしばらくまっていると、隣にすごく背の高い男性が並んで立ったということはよく覚えている。 信号が青になり、足を踏み出す。 早く帰りたいという気持ちが強かったからなんとなく歩幅が大きくなっていて、そして早くなっていたのを覚えていて、横断歩道を渡った後の歩道をしばらく歩いていた。 私はその時隣を彼が歩いていることには全く気付いていなくて、人の多い東京では行先が途中まで同じ、なんて人は多々あるから何も気にすることはなかったし、ただただ早く帰りたい。それだけだった。 『ケイジ!!!??? 誰よその女!! 誰も彼女なんかいないって言っていたじゃない!! 裏切者!!許せない!!』 つんざくような金切り声が後ろから聞こえて、驚いて声のしたほうを振り返ったその瞬間、お腹に何か衝撃が走り、そこから私の意識は途切れた。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!