53人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ
結局その女の人は逮捕され、倒れた私は彼に支えられるように救急車でここの病院に運び込まれて丸一日昏睡状態だったということだった。
「それで、この女性に見覚えはありますか?」
「いえ・・・、全く。ってか東京に知り合いなんて一人くらいしかいないというか・・。」
「そうですか。ご家族とかに連絡を取って身の回りのお世話とかしてもらうことは?」
「・・両親東京じゃないですし、介護士しているし、私のために仕事を抜けてここまでくるとか絶対無理だと思います。」
「そうですか・・・。」
困ったような表情をしたスーツの男性と女性に不安になって私まで困惑する。
「俺が面倒見ますよ。」
「え、」
「は?」
私とスーツの男性の声が同時に出て、そして同じようにぽかんとした顔でそう発した彼の顔を凝視した。
彼は丸椅子に座ったまま両ひざに置いた手を握りこんで何かを決心したように言った。
「こうなったのは俺のストーカーの女性が暴走したからですし、俺が責任取って面倒みますよ。」
「は? ストーカー?」
「一ノ瀬さんを刺した女性は彼、柴咲ケイジのストーカーだったんですよ。」
「へぇ・・・お兄さんモテそうな見た目してますもんね・・・。」
「は?」
「え?」
なにいってんだコイツ。そんな声が聞こえそうな各々の驚いたような顔に、意味が分からず怪訝な顔を向ければ「まあ、今時テレビ見ない人もいますよね」と婦警さんがフォローを入れるように呟いた。
「俺のこと知らないんですか?」
え、なに、そんなに有名人なの?国民的な感じの人?
じっと彼を見つめても全くわからないから首を傾げれば、「信じられない・・」と愕然としていた。
「私あまり外出ないのと、最近のモデルとか俳優とか全く分からなくて、」
「○○の剣とか知らない?」
「それ、漫画じゃないですか。 声優は貴方じゃないですよね?」
「それの実写!」
「実写興味ないです・・・ごめんなさい。」
嘘だろと項垂れる彼は宛ら試合に負けたボクサーのようだと思った。
最初のコメントを投稿しよう!