54人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ
「あ、先生にLINEしなきゃ。」
「先生?」
音楽の話で盛り上がる彼の話に相槌を打ちながら、サイドチェスト辺りを見渡してショルダーバッグを探せば簡易チェストの向こう側に立てかけられているのを見つけた。それを取るためには一度ベッドから落ちなくては取れないなと、足を動かしてベッドから降りようとしたらまた右腹部に猛烈な痛みが走った。
「いった、」
「大丈夫!? 言ってくれれば俺が取るのに、」
「いえ、そこまで迷惑はかけられませんから。」
「迷惑なんかじゃないよ。 はい。これでしょ?」
「あ、ありがとうございます。」
涙目になりながら私の代わりにショルダーバッグを取ってくれた彼にお礼を言って再びベッドに腰掛ける。ショルダーバッグの中からスマホを取り出してロックを解除しアプリをタップする。
その間に彼は一度トイレに行くと出て行き、漸く一息つけると長い長い溜息をついた。
”先生、愛奈です。カウンセリングの帰りに刺されて病院にいます。薬とかどうしたらいいかわからないので病院に来れる日ありませんか?”
メッセージを送信して既読がつくのを待てば、思いの外すぐに既読がついて返事が来た。
”は?刺された? どういうこと?”
”なんか、たまたま行く道が一緒で隣を歩いてた人とデートしているように見えたとかで知らない女の人に刺されて病院で運ばれたらしいです。”
”らしいって何で他人事なんだよ。”
”私も正直混乱してて・・”
”わかった。今日明日は診察もあるし面会時間には間に合いそうにないから二日後に行く。”
”助かります。お願いします。”
”傷は大丈夫なのか?”
”内臓が傷つくことはなかったらしくて、順調なら10日前後で帰れるらしいです。”
”わかった。行くまでは安静にしておけよ。なんか暇つぶしできるもの買ってくわ。”
”うん。ありがとう。”
最初のコメントを投稿しよう!