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先生とのやり取りで少し安心して、持っていたスマホで彼の名前を検索する。するとすぐにそのページは出てきて、ウィキにもその概要が乗っていた。
・・・こんな自分の情報が全世界に公開されているってどんな気分なんだろう。
私とは関わることのない未知の世界を想像するだけで鳥肌が立つ。私はインターネットの恐ろしさを嫌というほど理解しているからその中に身を投じるというのは凄いことだと思う。
でも、芸能人というのは人々の憧れ。その憧れに会いたいかと聞かれれば全くもって会いたくない。なぜなら、憧れはその画面の向こうの作られたものに向けられたもので、会ってしまうとその憧れは現実のものとなって憧れではなくなってしまうというのが私の持論だ。
別に芸能人がカメラのないところで何をしていようが正直どうでもよくて、私の場合は液晶の中だったり、紙面の中にいるその人に憧れて夢を見ていたいというタイプだから、週刊誌などのスクープとかを見る度に嫌悪感しかなかった。本人が直々にバラエティー等で言ったことを信じたほうが信憑性があると思っているから。
熱愛報道なんて、恋愛くらい好きにしたらいいと思うし、ファンなら祝福してなんぼだと思う。そりゃあ、「みんなの彼女だよ!」とか「ガチ恋エンゲージ」なんて売りでやっていて熱愛報道なんてされたら詐欺だとバッシングされるのは、まあ、なんとなく仕方がないとして・・。ただの俳優や、モデル、歌手が誰と恋愛してようが個人の自由だ。
トイレに行った彼もきっといろいろな苦悩があったことだと思う。そうでなければストーカーが私を刺すなんてことにはならない。
そう、彼は今回の件でいうと加害者ではなく被害者なのだから、私の面倒を見るのは何か違うのではないだろうか。
そう考えているうちに彼がトイレから戻ってきて再び丸椅子に座った。
「ねえ、」
「ん? どうかした?」
「なんで私の面倒見ようだなんて思ったんですか?」
「あ、敬語じゃなくていいよ。友達なんだし。」
「・・・なんで私の面倒を見ようと思ったの?」
私の質問に少し驚いたように目を見開いて、それから彼は「え、だって、」と頭をポリポリと搔きながら続けた。
「愛奈ちゃんは俺のせいで刺されたわけだし。」
「別に貴方のせいではないよね。悪いのはストーカーであって貴方はどっちかっていうと被害者でしょ。」
「そう言われればそうかもしれないけど、俺があの子をしっかりと拒絶しなかったからこういうことになった訳だろ?」
「そんなに思わせぶりな態度を取っていたの?」
ちょっと引いたように彼を見やれば、うーんと腕を組んで難しい顔をして悩みだした。そして彼女との出会いからポツポツとこぼし始めた。
「元々彼女は、映画が公開されるから、それの特集を掲載する雑誌のインタビュアーだったんだ。」
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