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東京の人が来るぞ!
「はい、みんな聞いて〜!!」
金曜日の始業時間に、みんなだらだらと鹿島部長の声に耳を傾けた。
「なんと〜今度!東京本社の人が視察に来られます!2.3日!滞在されますので〜失礼のない様に!!」
え〜っ!!
とざわつく社内。
「えー新工場建設に向けてね。我が工場が…えーなんだったかな、なんとかランキング1位にね!みんなの力でなったからね!」
周りの社員がぼそぼそと鹿島部長に囁く。
「え?生産性や、清潔?あと…えーっとそれらの総合点…あーまぁとにかくね!新しい工場を建てる参考にされるそうです!」
みんながパラパラと拍手をする。
「なんで普通にやってるだけやのに、そんなランキングに入るかねぇ?」
「さあ?」
と社員が首を傾げた。
「工場長の國木田くんのお陰やないですか?」
「それはある。あの子無口やけど、よぉ働くわ〜」
鹿島部長がまだ話すようで、みんなは口を閉じた。
「そこでやね!今日は工場の人以外で、手の空いてる人で掃除しましょう!!」
鹿島部長が言い終わると、みんな何から手をつけていいのか分からず、わさわさする。
えらいこっちゃ、えらいこっちゃと。バタバタしながら、うろついてるだけの島崎さん。
神田和泉は、とりあえず引き出しに入っているお菓子を自分の鞄に入れに行くことにした。
突如始まった大掃除は、みんなくだらない自分の身の回りの細かい物を片付けることから始まった。
鹿島部長は新入社員の猪俣くんに声をかけると「歓迎会の予約頼むわ。」と、肩をぽんと叩いた。
「2、3日としか聞いて無いから、2日目でお疲れ様会みたいにしよか。」
だそうだ。
猪俣は新しい味のプリッツの箱を自分の鞄に入れている和泉に、
「歓迎会って、前俺たちの歓迎会やったとこでいいですよね?」
と聞いた。
「いいと思う。」
と和泉は答えた。人数的にも全員でするとなると限られる。忘年会で使ったお店より、歓迎会で使った店の方が、みんなの不満も少なかったように思えた。
猪俣はみんながバタつく社内を抜けて、電話を掛けに部屋の外へ出た。
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