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第1話
夏の終わりの不思議な出来事について話そうと思う。
夏の終わり、日が暮れるのも少し早まってきてセミの声の種類も変わってきた。
そして空気が何か‐終わり‐を感じさせる雰囲気を出していた。
時間は何時頃だっただろう・・・・日暮れ、家、ビル、建物の灯りの付き始めの頃。
昼と夜の間。気だるい空気が流れていた。
東京。新宿の紀伊国屋を出て駅に向かう。欲しかった本がなかった。紀伊国屋においてないのだからもう取り寄せしかない。取り寄せはあまり好きじゃない。自分の足で本屋に行き、自分で見つける。そこに意味がある。
だから電子書籍は絶対に買わないと決めている。
夏休み、特にやる事もなく、しっかり宿題も終わらせて、暇を持て余す女子高生、私。
ちなみに2年生だ。受験もなく一番遊べる年ごろだろう。彼氏も友達もいないけどね。
彼氏もいて、友達も沢山いそうな新宿の陽キャの間をすり抜けて駅に向かう。
さてどうしよう。帰っても何もない。でもここにいてもつまらない。だから私は本を読む。その現実逃避の手段も手に入らなかったけどね。
ふと足元を見る。
目。
目だ。
目が落ちている。
ここはキャー!とでも叫ぶ所だろうが、そうはしなかった。
そして私は目と目が合ってしまった。
その目は綺麗だった。
血も付いておらず、汚れてもいなかった。
その目と目が合って数秒か数分か。人通りが世界屈指の新宿で止まってる私は誰の迷惑にもなっていなかった。それはあとになって気付いた事なんだけど。
目は1個しかなかった。
私はその目を拾った。
生暖かった。少し脈打っていた。指を切った時みたいな脈だ。
その場から早足で移動する。そのまま山手線に乗る。
一番後ろ端の席。幸いその車両には誰も乗っていなかった。
次の駅まですごく長く感じた。それは私が非現実的な事をしているからか、目に対する罪悪感かはたまた謎の昂揚感か・・・・。
電車は揺れる。動機が強くなる。
ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン
「ね、目知らない?」
いつの間にか目の前いた、目隠しをした幼女が言った。
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