きっとありふれた恋物語

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物心ついた時には隣に はにかむような笑顔が素敵な君がいて 僕は君の気を引こうと 幼い時は馬鹿ばかりしてた 思春期になり僕は悟った 僕には君だけが必要なのに 君は僕ではなくても良いこと 君は他の奴にも笑顔を向けて 僕のために泣くことはなかった 幼馴染なんて肩書は これっぽっちも欲しくはないのに そればかりが僕らを縛って 臆病な僕は一歩を踏み出せない 僕の心は灰になりそうだ だから僕は志望校を変えて 君のそばから離れることにした 大学はさらに県外に入学して 君の隣の奴が目に入らないようにした それでも僕の心は自由にならない 虚しいだけの青春を過ごした そのまま就職をした僕は 相変わらず一人きりのままなのに 心の中にはいつも君が居て こんなまま次の恋なんてできない 一生独身でもいいかなと 思った頃葉書が届いた 僕は迷った挙句返信した 出席に丸をつけて 同窓会で目に入ってきたのは 変わらぬ笑顔なのに綺麗になった君 僕は声をかけることもできなくて ただ酒とつまみを食べ続けた 気付けば辺りは真っ暗で 星の瞬く空の下には 僕とその隣を歩く君だけ 君は俯き何も話さず 僕も前を向きただ黙っていた 君の家の門が見えてきて 僕はやっと君の目を見つめた 一瞬僕は言おうとした言葉をのんで 「じゃあね」とだけ言って目を逸らした 歩き出そうとしてスーツに違和感 君が僕のジャケットの端を握りしめていた 見つめ合うけど言葉を発せられず 再び去ろうとした僕に 君は震える唇を開いて 「寂しかったよ」 とか細く言った 君の目からは大粒の涙 初めて君が僕のために泣いた 僕は。 「好きだ」 君を抱きしめていた 「ずっとずっと君だけが好きなんだよ」 長い長い沈黙 僕の早い鼓動が君の鼓動と重なった気がした 君が僕の背に手を回して きゅっと僕にしがみついてきた この広い世界の中 僕と君しかいないような気がして 僕は幸せ過ぎて怖くなって さらに君を抱きしめた 僕の心の中には君だけがいて 君の心にも僕だけが……? 一年後 真っ白なドレスを着た君が 僕の隣でブーケを投げた       了
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