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3項 窃盗罪
あきやは幼い頃から親の転勤で転校する事が多かった。
転校先にはすでにいつも昔なじみの友達の輪が出来ていて、方言や環境の違いで
新参者のあきやは中々馴染む事が出来ず、
やっと馴染む頃には転校、を繰り返していた。
とびっきり勉強が出来たわけでも
スポーツが出来たわけでもなく、
だから何をしても注目される事は少なく、
孤独を感じたあきや。
初めは、ただ自分の存在を知って欲しかった。
それで教室で育てていた植木鉢を落としてみた。
パリーン!
という音と共に
周りの注目が一手に集まった。
「大丈夫?」
先生が凄い勢いで駆け寄ってくれた。
周りも一緒に片付けるのを手伝ってくれた。
嬉しかった。
かけっこでわざと転んだりもした。
みんながかまってくれた。
転校するたびにそれを繰り返すようになった。
しかし次第に
それも数が重なるたびに周りから面倒くさがられ
ウザがられるようになった。
結局また一人に戻った。
それでも注目して欲しかった。
今度は窓ガラスを割ってみた。
ひどく怒られた。
でもかまって貰えた。
それだけでうれしかった。
消化器をぶちまけた。
トイレを水浸しにした。
消防ベルのボタンを押して鳴らした。
その度に誰かがかまってくれた。
次第にあきやの周りにやんちゃな友達も集まるようになった。
友達と一緒にやんちゃをするようにもなった。
しかし、それに相乗して怒られる回数も増えていった。
両親、先生からも毎日のように怒られるようになった。
何をしても怒られた。
何もしてなくても怒られた。
周りが信用してくれなくなった。
自分も周りを信用できなくなった。
でも友達だけは信用できた。
そんな友達がある日、喧嘩をしてやられてきた。
ムカついた。
報復にそいつをボコボコにしてやった。
それでも怒られた。
でも友達だけは側にいて喜んでくれた。
それだけでよかって。
俺がこいつらを守ってやろう。
そう思い喧嘩に明け暮れた。
そのうちに友達から「お前がトップだ」
「お前がリーダーだ」と言われるようになった。
同時に周りから煙たがられるようになった。
嫌味は言われど見向きもされなくなってきた。
こんな世界に嫌気がさし、反発するようになった。
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