3項 窃盗罪

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「ふざんけんじゃねぇ〜!離せ!!」 あきやは去勢を張って女子高生の手を 思い切り振り解いた。 女子高生は「は!?」というかのように こちらを見つめる。 くそ!何て奴なんだ! どうせこいつも援交とかなんかしてるんだろうが! 何で俺だけ150円で捕まらなきゃいけないんだ! あきやは収まらない思いを見た目で判断して 心で女子高生に罵声を浴びせ、 「返せばいいんだろ!返せば!」 自分を正当化するようにガサゴソ 先ほど入れたばかりのコーヒーをカバンから 探り出す。 その行動を見ていた女子高生は まだ片方だけカバンに手を突っ込んだままの あきやの腕をもう一度 強引に引っ張り言い放つ。 「なに言ってるの!?私が言ってるのは 『何、買おうとしてるの!』って事!!」 「え?!」 あきやは訳が分からない。 そんなあきやをよそに ズカズカとあきやを連れてレジに向かう女子高生。 よく見ると、女子高生のあきやを引っ張る手と 逆の手には、"sweet"と"vivi"という雑誌が 握られている。 『まさかこいつも万引きするつもりなのか!?』 いや、しかしどうやってこれを隠すつもりなのか? もう店員の視界にも入りえる距離だ。 ごまかしなんて効かない。 店員がチラッとこちらを見る。 そんなのお構いなしで店員に立ち向かうように 進む女子高生。 『完全にバレてる!』いや、これは どう考えても買う流れだ。 あきやはカバンに入れていた手をサッと抜き、 何も無いよ!と、言わんばかりに ハハッと笑顔を店員に見せる。 『やっぱり突きつける気だ!こいつ!』 しかし、逃げようにも店員も目の前。 逃げ場はない。 あきやは頭が真っ白になり、 もう、なるようになれ! と、自暴自棄に陥った。 と、次の瞬間。 レジに向かっていた女子高生は店員を目の前にして 突如進行方向を変え、 店員の目の前を横切って出口に向かった。 「え?え?」 もちろん女子高生は雑誌を片手にしっかり握っている。 『こいつ、本気か!?』 あきやは引きづられながらも振り返り、 店員の行動を確認した。 しかし、先程こちらに気付くように チラッと見たかと思った店員は 何食わぬ顔で揚げ物の補充作業を行っていた。 すると、見てみぬフリをしてくれたのか、 感謝なのか、それとも成功した嫌味なのか 自分でも分からないが、 あきやの身体は勝手に手を振り、 そのまま女子高生に引きづられるまま コンビニの自動ドアをくぐった。 その後も店員は追いかけてくる様子はなかった。 ここまで大胆な万引きはあきやも初めてで 鼓動は止まらなかった。 『堂々とはいったものの、ここまで堂々と万引きをするとは、、、』 そんなあきやとは裏腹に 女子高生は当然のようになんとも堂々と立っていた。 そんな名も知らぬ女子高生はあきやに 「ちゃんとしなさい。」 と、アドバイスを吐き そのままズカズカと去って行った。 あきやはその覇王のような後ろ姿を 茫然と見送った。
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