第2条 解放  1項 あきやのズレ

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第2条 解放  1項 あきやのズレ

女子高生からもらったコーヒーを片手に パンをムシャクシャかじりながら あきやは教室に戻ってきた。 次の授業は体育。 男女別々で行い、今は男子はバスケットを 行っている。 バスケットはまぁまぁ好きな程度だが 何より隣のクラスの大智と一緒にやれるのがいい。 中学に入学した当初地元のツレも少なく 初登校からすでに髪をツンツンに立てて登校 していた為、すぐに先生に目をつけられ 何度も指導を受けた。 そのせいで怖い人というレッテルが貼られ 孤立していたのを 入学当時同じクラスだった大智が声をかけてくれ 仲良くなった。 それからはずっとつるんでいて そのまま同じ高校に当たり前のように進んだのだが しかし、高3の春。 賢い大智は成績を上げ、隣の進学クラスへと 移って行った。 そんなあきやだが体育は2クラス合同で行う為、 この時だけは大智と同じ授業を受けられた。 別にクラスの奴と馴染まなくてもいい。 分かり合おうとも思わない。 ツレとつるんでさえいれば それで良かった。 しかし、戻ってみるといつもなら 隣のクラスの男子も集まって体育に向けて 着替えをしていてもいい時間であったが1時間ほど前と何も変わらず、閑散とした教室。 女子の姿も何故かある。 隣のクラスに走る。 隣のクラスも同様に準備の行われないまま 男女が教室で待つ。 その教室の黒板にはあきやの教室と同様の 「自習」の文字。 自分のクラスの現代社会だけが自習ならまだしも 隣のクラスまで自習とはどういうことだ!? 体育はどうなった!? あきやは当たるように席に座って自習をする いかにも真面目そうな生徒の肩を 力強く叩いた。 「おい!!」 ビクッと跳ね上がりそうなほど驚き、 「へ?」 と、間の抜けた返事をし、 焦ってノートと教科書を閉じて あきやの方を振り返った優等生は 震える声で言った。 「な、なんだい?」 まぁ大概こういうタイプは話しかけると同じ反応が帰ってくる。 何かされるんじゃないか?と恐れて 目を泳がせながらおどおど顔をそらす。 何もするわけがない。 だがこういう態度に余計に腹が立ち つい声を荒げてしまう。 「体育はどうなったんや!!」 別に体育をこいつがどうにかしてないのは分かっている。 しかし、こういう真面目な奴なら 理由を知っているのではないか? そう思った。 「え?な、なに〜?そんなん知らないよ〜!」 しかし、思いに反し優等生は何も知らなかった。 いや、ごまかされたのかもしれない。 それよりこのオドオドした態度。 やはり腹が立ち、思わず胸ぐらを掴んで 睨みながら立ち上がらせた。 「ちょ、ちょっと!ホントに知らないって! ここの先生は授業をやりたい時にやってくるから、、、体育もいつ始まるか分からないよ。」 優等生は意味の分からない事を抜かしていが、 まぁここまでやって答えが出ないのは 本当に知らないって事だろう。 チッ! あきやは大きく舌打ちをし、胸ぐらを離してやる。 でも、まぁ体育がないのは残念だが 考え方によっては体育が同じ大智と遊びに出れる。 しかし、そういえば大智の姿が見当たらない。 早々にどこか出ていったのか 大智を探しながら一度教室を出た。 廊下を歩くと静かな校舎。 まだ授業の始まっていない休みの時間は いつもなら廊下に邪魔なほど人がごった返す。 「どうなってるんだ?」 違和感を感じながら廊下を歩いていると ブンブンブンブン。 校舎に響き渡るほどの轟音を鳴らし、 校庭にバイクが入ってきた。 あきやは『威勢のいいやつが来たな』と、 窓庭に寄り、目を凝らすように音の先を見つめた。 そこには2台のバイクがあった。 前方のバイクには1人、後方には2人。 ノーヘルで乗る。 あきやはそのバイクに見覚えがあった。 特に前方の1台は 鮮やかな赤と黒の色彩の "HONDA"の"CBR600RR"という大型車。 兄の影響でバイク好きな大智が 以前に喧嘩の戦利品でかっぱらった物だ。 もしろんその車体には金色に髪を染めた 大智が乗っている。 あきやは焦って校庭の大智の元へ急いだ。
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