第2条 解放  1項 あきやのズレ

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「おい!大智!!」 あきやが焦って大智に声をかける。 それには理由がある。 大智のバイクは盗難品。あとは原則この学校はバイクでの通学は禁止だ。それにヘルメットを被っていない。もちろんそれもある。 それともう一つ。このバイクは大型。 あきや達17歳の高校生が取れる免許は原付免許。 乗れるバイクは小型限定自動二輪、原動付、普通自動二輪の三種類に限定され、 最大400ccまでと決まっている。 このバイクはそれを超える599cc。 つまり違法乗車なのだ。 法律違反。見つかれば即、退学だろう。 ブロロロロとエンジンを吹かしながら 堂々と校庭に停まる大智御一行。 「お〜い!あきや!迎えに来たぞ〜!」 飄々と語尾に音符でもついているかのように ノリのいい感じの大智。 そんな大智が「おや?」という感じであきやの違和感に気付く。 「おい〜あきや!お前、家に居ないからさ〜。どこに居るかと思ったら、周平が学校へ向かったって言うし、、、ってか頭に包帯なんか巻いて、どうした?あきや。」 そんないつも通りの軽い大智に あきやは呆れた様子で伝えた。 「はぁ、お前なぁ。学校にバイクで来る奴があるか。」 大智は調子の良いやつだがこういう常識は分かっていると思っていた。 まぁ、そんな何事もノリで楽しくこなしてしまうのがこいつのいい所なのだが・・・。 「まぁ、早く!見つかる前に行くぞ!」 あきやは仕方ない奴だなぁ、と ポンと大智の肩を叩き下校を促した。 大智御一行はあきやに言われるなら、と バイクの車体を校門へ向けUターン。 私服の大智御一行に対し、あきやは制服であった為 そのままバイクに乗り込む事が出来ず とりあえず校門から出ろ という感じで誘導した。 そんなあきやに大智はふと言った。 「なぁ、あきや。そんなに焦って、何に見つかるって言うんだよ。」 「は?」 あきやは呆れ顔で大智を諭した。 「お前、学校辞めさせられてもいいのか?っていうか辞めさせられるだけならまだいい。これで捕まってみろ!早死にだぞ。」 万引きの時の生涯設計を思い出す。 そんな人生を大智には歩ませるわけにはいかない。 「いやいや、捕まるって何さ。」 大智が、(笑)という感じの含み笑いで答える。 警察上等!ってか。 その大それた所もまた大智らしい。 それでもそんな大智を守ってやるのも俺の仕事だろうと。 「まぁ、警察とかどうでもいいけどよ。わざわざバラすのはただの馬鹿だぜ?」 そんなあきやの言葉を引き金に、大智の饒舌の オンステージが始まった。 「警察(笑)。かつて世界最高の組織として注目された日本警察も、今じゃあまったく機能しない無駄な組織に落ちたもんだ(笑)。まぁ、俺としては あの高圧的な行動は、より日本国民を苦しめていたと思うね。だから3週間前の法改正で、その鬱憤が爆発したのではないだろうか。」 いつもは「だり〜」とか「うざっ」とか連呼する 大智だが、知的な事を言うときに喋り口調が 変わりテキパキするのは相変わらずだ。 それより今、気になるフレーズを聞いた気がした。 「ちょっと待て!大智!警察が機能していない!?3週間前の法改正って何だよ!?」 そうだ。あきやは今までにそんな事を聞いた事がない。 確かに今日はおかしな事ばかりだったが、 昨日まで普通に学校に来て、授業があって、 こっそり煙草を吸って、喧嘩をして、 頭どつかれて・・・ 「あ!!」 あきやは気付いた。 『もしかして俺、頭どつかれて3週間も寝てたのか?』 これはあくまで仮定であった。 しかし、あきやにとっては昨日の事が 3週間前の事だったと思えば辻褄があってくる。
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